2021年11月20に発表され、わずか3日後の11月24日に見直しされることになったsnow peak(スノーピーク)の新しい会員制度ですが、12月3日に修正方針案が発表されました。これを元にユーザーから広く意見を募っています。詳細をレビューします。
アイキャッチ画像出典: snow peak
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2021年12月8日追記: 新制度が確定しました。
大炎上の末、再度見直されることになった会員制度
再度本問題を時系列順に整理します。
これまでの経緯の詳細は以下の記事をご覧ください。
12月3日に発表された見直し案
以下のページで見直し案が公開されています。
まずは炎上した当初案と、今回の修正案の違いを比較してみましょう。
項目 | 当初案 | 変更案 |
---|---|---|
ランクダウン | サファイア以外は ランクダウン要件あり | 全ランク ランクダウン要件なし |
ランクアップ | サファイア以外は年間に変更 サファイア: 累計300万 ブラック: 年間50万 プラチナ: 年間30万 ゴールド: 年間20万 シルバー: 年間10万 | 全ランク累計に変更 サファイア: 累計300万 ブラック: 年間100万 プラチナ: 年間30万 ゴールド: 年間20万 シルバー: 年間10万 |
クレジットカード | プラチナ、ブラック会員は 年会費のかかる クレジットカードを作れば ランク維持可能 | クレジットカードと 会員ランクは切り離し、 年会費相当のポイントバック |
カタログ | 上級会員は 特製ケース付きカタログを送付 | 過剰包装、一律送付をやめ デジタル化推進 |
会員カード | 上級会員はチタン製カード、 レザーケース送付 | 完全アプリ化推進 |
限定イベント参加条件 | ブラック会員は Snow Peak Way Premium Snow Peak Special Meeting 参加権あり 参加時に記念品 | 参加条件、 記念品贈呈方法など 再検討 |
炎上した要点はしっかりと改善されています。ユーザーの意見に真摯に向き合った結果と言えます。一方で元々会員制度変更の理由になっていたコスト削減も合わせて施策として盛り込まれています。
スノーピークが会員制度変更で本当にやりたかったことは?
今回もの凄いスピード感で改善案が提示されましたが、元々スノーピークはなぜあれだけ炎上した改悪案を出さなければならなかったのでしょうか。改めて振り返ります。
ランクダウンが必要だった理由
既報の通り、今回発表された新会員制度の炎上した要因は、「これまでランクダウンしないようになっていたプラチナ会員、ブラック会員にランクダウン条件がついた」点です。
プラチナ会員は累計30万円、ブラック会員は100万円のスノーピーク商品購入をしたロイヤルユーザーですが、このロイヤルユーザー達を落胆させてまで両会員の数を減らさなければならなかった理由をスノーピークは以下のように説明しています。
四つ目は、サービス水準の維持向上のための制度変更です。
数年前よりロイヤルカスタマーの皆さんに当初のような高品質なサービスで会員制度を維持できなくなってきていると折々に感じてきました。これは当初の会員制度の設計時に想定していたロイヤルカスタマーの数を大きく上回る人数のユーザーの皆様が各ステイタスに到達されたというありがたく嬉しい誤算の結果です。
具体的にはキャンプ場や各イベント会場のキャパシティや、イベント開催できる回数などにも起因しますが、サービスの品質を維持向上していく為にも会員制度のリニューアルが必要となっている状況であると考えております。
出典: スノーピーク新会員制度特設ページ
プラチナ会員数、ブラック会員数の推計
「想定していたロイヤルカスタマーの数を大きく上回る人数のユーザーの皆様が各ステイタスに到達された」という説明がありましたが、実際にプラチナ会員、ブラック会員は何人いるのでしょうか。これまでの決算発表資料から両会員の人数を推計します。
(単位: 人) | カード会員数 | ブラック会員数 | 比率 | プラチナ会員 | 比率 |
---|---|---|---|---|---|
2019年6月 | 389,000 | 3,000 | 0.77% | 17,000 | 4.37% |
2019年12月 | 428,000 | 4,000 | 0.93% | 20,000 | 4.67% |
2020年12月 | 525,000 | 5,000 | 0.95% | – | – |
2021年12月 (推計) | 650,000 | 6,300 | 0.98% | 36,000 | 5.60% |
直近の伸び率や、今回の騒動による離反影響がどれくらいあるのかわかりませんが、ブラック会員は6,300人程度、プラチナ会員は36,000人程度存在するものと思われます。
ランクダウンさせてまで本当に会員制度は維持できなかったのか?
あっさりとランクダウンが撤廃されることになりましたが、「元々ロイヤル会員が増えすぎて会員制度が維持できない」という理由でやむなくランクダウン要件をつけたという説明だったはずです。ランクダウンを撤廃したことでその問題はどうなるのでしょうか?
ロイヤル会員維持コストは本当に甚大なのか?
ロイヤル会員の維持コストというのはどれくらいかかるのでしょう。例えばブラック会員であれば以下のようなコストが発生します。
会員特典 | 想定コスト |
---|---|
チタン製カード レザーケース | 発券時のみ |
ポイント付与率アップ | 商品購入時のみ |
割引キャンプ場増加 | 利用時のみ |
雪峰祭限定アイテム 優先予約 | 商品購入時のみ |
特製ケース付き カタログ送付 | 1,000円/年? (全ブラック会員) |
Snow Peak Way Premium 参加権 | 4,000円+運営費 (参加者のみ) |
Snow Peak Special Meeting 参加権 | 2,000円+運営費 (参加者のみ) |
ブラックカード発行時のコストは初回のみですし、ポイント付与率アップやキャンプ場の割引、雪峰祭限定アイテムの予約などは商品購入やサービス利用を伴うため、そこで上がる利益から特典コストは捻出できるはずです。
したがって、ランクアップ後にお金を落とさずにタダ乗りできてしまう特典は、カタログとSnow Peak Way Premium、Snow Peak Special Meetingのイベント参加となります。
カタログ
あの分厚いカタログと大層なカタログケースにどれだけの原価がかかっているのかわかりませんが、仮に1冊1,000円かかっていたとすると、プラチナ、ブラック会員6,300人にかかるカタログコストはおおよそ4,200万円となります。
Snow Peak Way Premium、Snow Peak Special Meetingのイベント参加権
イベント実施にはその運営費と、缶クーラーやシェラカップなどの記念品費用が発生します。ただし、そもそもこれらイベントにかかるコストは参加者にのみしかかかりません。ブラック会員が増えすぎてこれらのイベントへなかなか参加できないという話はあるかもしれませんが、Snow Peak Wayが年間15回開催しているのに対し、Snow Peak Way Premiumが4回(いずれも2021年)しか開催されないので、SPWの開催数を減らしてSPWPに寄せれば解決できるはずです。
クレジットカード年会費収入の方がコストより圧倒的に多く見込めていた
カタログコストが仮に1,000〜2,000円だったとして、プラチナ会員、ブラック会員の合計4.2万人にかかるコストは4,200万〜8,200万円です。
元々発表していた新会員制度で、両会員の20〜30%がクレジットカードに加入していたらどうなっていたでしょう。
1,260〜1,890人が年会費30,000円を、7,200〜10,800人が年会費3,000円を支払うことになるため、クレジットカード年会費売上見込は約6,000万〜9,000万円となります。
金額的なインパクトだけ見ると、建前はロイヤル会員を減らしてコスト削減が必要という話はありつつも、ロイヤル会員を減らしさらにクレジットカード年会費売上から利益を得たかったというのが本音だったのでしょう。
今回の修正案は本発表ではなく、ユーザーの意見を募集中
今回の修正案ですが、あくまで本決定の正式版ではなく、スノーピークはこの案を公表し、ユーザーからの意見をアンケート形式で募っています。良く言えば一方的に制度を決めてユーザーに押し付けるのではなく、共創していきたいという姿勢を示している、悪く言えば、再度炎上しないように小出しにしてユーザーの反応を伺っているということでしょう。
アンケートはスノーピーク会員であれば誰でも投稿できるようになっています。
まとめ
数年に渡り検討されてきたと言われていた制度案に対し、今回の修正案はわずか中6営業日で発表されました。相当なトップダウン体制がなければこのスピード感は実現できなかったでしょう。スピード感は大変素晴らしいですが、本気でやればこれだけのことができるのであれば、最初の新制度発表はもう少し慎重にできなかったのかと、やはり残念に思ってしまいます。スノーピークはユーザーと向き合い制度を改善していくということを表明しているので、意見のある方はぜひフォームに投稿して意見表明しましょう。
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