2020年の10月下旬の発売以来、瞬く間に人気となり完売したDODのスゴイッスが2021年1月15日に再販されました。それが再販直後にも数時間で売り切れてしまい、他業者により価格が2倍以上で販売されるという事案がありました。本件に限らず、キャンプグッズの転売問題について掘り下げます。
アイキャッチ画像出典: DOD
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2021年5月20日に再販されることが発表されました。
スゴイッスとは?
今回紹介させていただくスゴイッスとは、ビーズ株式会社が展開するアウトドアブランドDOD(ディーオーディー)が2020年10月に販売開始したキャンプなどで使うのに適したアウトドアチェアです。
イスのフレームの長さを調整することにより、高さやリクライニング角度を変えられるという画期的な商品で、発売当初から人気を博し、ファーストロットはすぐに完売していました。
スゴイッス品切れ炎上事案
今回スゴイッスの再販開始にあたり結果的に炎上してしまったのですが、時系列順に何が起きたのかを整理します。
2021年1月14日: Amazonにおける週内の再販について告知される
TwitterのDOD公式アカウントから、2021年1月14日に、今週中にAmazonでスゴイッスの再販売が行われる旨のアナウンスがありました。何日の何時になるかはDODでは把握できないため、ユーザーにはAmazonが提供する「お知らせを受け取る」機能を活用することも合わせて案内されました。
2021年1月15日 9:30頃: 突如始まる再販
アナウンスのあった翌日の朝9:30頃、突如Amazonでの再販が開始されます。平日金曜の朝9:30です。普通の仕事をしている方はなかなかTwitterはなかなかチェックできない時間帯でしょう。
2021年1月15日 正午過ぎ: DODによる定価販売分は品切れに
再販開始から3時間弱で品切れになってしまったようで、Amazon上でも「現在お取り扱いしておりません」表記に変わってしまいました。
2021年1月15日 午後: 買えなかったユーザーのコメントが続出
上記の再販開始のアナウンスをしたDOD公式Twitterにスゴイッスの購入ができなかったユーザーのコメントが午後どんどん付き始めます。(記事執筆時時点では購入できた方のコメントも含め189コメントついています)
- Amazonから通知が来なかった
- 仕事をしていて再販に気づかなかった
- 昼休憩に見たらもう売り切れていた
といった主旨のコメントが多く見受けられます。特にAmazonの通知に関しては、通知設定の問題なのか機能そのものの問題なのか、再販開始直後にタイムリーに通知を受け取れなかったユーザーが結果として多くいたようです。
2021年1月15日 17時頃: 転売業者が24,800円で販売を開始
品切れ直後には「現在お取り扱いしておりません」表記だったAmazon上のスゴイッスですが、夕方17時頃在庫が復活します。ただしAmazonマーケットプレイスによる第三者出品で、価格が税込26,700円(DOD販売時の定価は9,430円)、入荷予定日が3月4日となっています。
また記事執筆時時点では、SOLD OUTになっている出品も含めると、スゴイッスの転売商品はメルカリでは60件強、ラクマでは20件強出品されています。
結果だけ見ると、以前から再販を楽しみに待っていたユーザーが仕事中に再販のタイミングを見逃し、お昼休みにそれを知り、仕事が終わってネットを見てこの転売の状況を知るという悲劇が行ってしまいました。DODのTwitterのコメント欄を見るとその悲痛が伝わってきます。
何が問題だったのか?
わずか1日にして残念なことが一気に起こってしまった訳ですが、突き詰めると何が問題だったのでしょうか。
問題1: 人気商品の需要予測
まず、「品薄にならないくらいスゴイッスをたくさん生産しろ」という批判は筋違いです。需要より生産が少ないと買えない人からは批判や不満が出るものの、需要より過剰に生産してしまうと誰にも誉められないですし、メーカー側が余剰在庫リスクを全部かぶる必要があります。作り過ぎて余るくらいなら、少なく生産して販売機会を遺失してしまう方を選ぶというのは経営上の判断として仕方ないです。
ただし、今回のスゴイッスに関しては、もう少し需要予測の精度を上げる余地があったのでは?とは思います。例えば他メーカーは、入荷お知らせメールの登録数からある程度需要を予測したり、人気になるとわかっている製品に関しては受注生産方式を取ったりしています。
DODの公式オンラインストアDOD STOREには、特定商品をお気に入りに追加する機能はあるものの、入荷時にメール通知を受け取るような機能は実装されていません。品切れ中の商品をどれくらいのユーザーが待っているかをもっと知る努力をする余地はあると思います。
問題2: コントロール困難なAmazonでの販売
一番疑問だったのがこちらです。以前から人気商品の転売問題を抱えていたDODは、特に2020年からは販路戦略を変えてオンラインは直販主体に切り替えていました。実際、ここ最近の新商品のオンライン販路のほとんどが直販であり、Amazonでのみしか販売しなかったスゴイッスだけがとても例外的であることが以下の表を見ていただくと明らかかと思います。
商品名 | オンライン販路 |
---|---|
フトンキャンパー | DOD STOREのみ |
ニンジンプルプル | DOD STOREのみ |
スパイダーベース | DOD STOREのみ |
ジミニーシュラフ | DOD STOREのみ |
ヤーツ | DOD STOREのみ |
アルミキャリーワゴン | Amazon、京王アートマン |
オーマイ(略)タープ | DOD STOREのみ |
キャンプタマイーレ | DOD STOREのみ |
アツイノイケルシランケド | DOD STOREのみ |
ソフトくらぞう(46) | Amazon、CanCamp、京王アートマン、 フィッシングマックス、A-Price |
レンコンテント2M/L | DOD STOREのみ |
ヨクミルヤーツS/M/L | DOD STOREのみ |
スゴイッス | Amazonのみ |
ジミニー/キャナリーテーブル | DOD STOREのみ |
キノコテント | DOD STOREのみ |
スースーアンダーミー | DOD STOREのみ |
Amazonや楽天市場などのECプラットフォームで販売した方が販売の絶対数が増える、販売にかかる管理工数が削減できるというメリットがある一方、販売開始タイミングを細かく制御できない、購入制限や同一人物からの購入をキャンセルできないなど、転売抑止のためのコントロールができないというデメリットがあるのは自明だったはずです。それゆえに直販に切り替えてきたはずです。
問題3: ユーザーとのコミュニケーション
企業ごとにソーシャルメディア運用ポリシーがあるでしょうから、それに則っているのだと思いますが、もう少し購入できなかったユーザーに寄り添ったコミュニケーションがあってもよかったのではないかと思います。
たくさん注文あってもう買えません→生産体制強化してがんばります→転売品買ってもサポートしないからね というアナウンスだけ見てしまうと、DODファンでスゴイッスを買いたいと思っていたにも関わらず買えなかったユーザーに対して塩対応過ぎるのではと心配になってしまいます。
キャンプ業界全体に存在する転売問題
DODに限らず、他メーカーでも人気商品は数分で売り切れることはありますし、物によっては同様に転売行為が行われている商品もあります。転売は転売で、需要と供給がマッチするから成立する話なので必ずしも悪とは言い切れない部分はあるかと思いますが、キャンプグッズメーカーが鎬を削って創意工夫で作り上げた商品を適正価格で欲しいユーザーが購入し、メーカーが利益を上げるというサイクルがうまく回らないと健全な業界発展につながらないと考えています。
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