snow peak(スノーピーク)の2024年新商品として「リゲルPro.ストーブプラス」が2023年11月25日に予約販売されます。販売価格は1,485,000円(税込)と一般的なテントの価格帯とは大きくかけ離れており話題となりました。一体誰向けのテントなのでしょう。詳細をレビューします。
アイキャッチ画像出典: snow peak
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大きな話題となった約150万円のテント
スノーピークから2024年新商品として、「リゲルPro.ストーブプラス」が発表されました。
2023年11月25日から予約販売開始
「リゲルPro.ストーブプラス」は、テント内で薪ストーブを利用することを前提に作られたスノーピークのフラッグシップシェルターです。
その価格の高さが大きな話題に
2023年10月27日に製品に関する正式発表があり、瞬く間にソーシャルメディア上で話題となりました。製品そのものよりもその価格設定が話題の中心となり、残念ながらその声の殆どはネガティブなものでした。
業績不振改善策としての高単価商品
ネガティブな批判に晒されることになってしまった「リゲルPro.ストーブプラス」ですが、スノーピークはどのような背景で約150万円という値付けをするに至ったのでしょうか。
決算発表で公開された業績改善の打ち手
2023年12月期第2四半期の決算発表で、スノーピークは業績予想の下方修正を行いました。業績不振改善の打ち手として、2024年新商品の早期販売と、既存顧客向けに単価上昇を狙った2024年新商品提案を行うと発表しています。
投資家向けに短期的に業績を改善させるため、「スノーピークへのロイヤルティが高い既存顧客に対し、単価の高い新商品を早めに売る」ということをメッセージとして発信しています。
リゲルPro.はこの打ち手の1つではない
では、今回の「リゲルPro.ストーブプラス」はこの施策の一環なのでしょうか。
打ち手の一覧の中では「圧倒的な商品力」という形容がされていますが、「リゲルPro.ストーブプラス」は少なくとも価格の面では圧倒的でしょう。
確かに単価上昇は狙えますが、何百張りも売れるような商品ではないため、「リゲルPro.ストーブプラス」が業績改善の打ち手の具体策の1つである可能性は低いと推察されます。
リゲルPro.ストーブプラスは個人をターゲットとした製品ではない?
「リゲルPro.ストーブプラス」の販売目的が業績改善ではないとすると、真の狙いはどこにあるのでしょうか。製品特性を見ると、そもそも一般個人をターゲットとした製品ではない可能性が見えてきます。
オンラインでは購入できず店頭販売のみ
「リゲルPro.ストーブプラス」の販売方法は店頭販売のみとなっており、オンラインでの購入はできません。「購入のご相談から製品の使用方法や設営手順・販売状況など、スタッフが丁寧にご案内する」というのが販路を限定する理由として説明されています。(※リゲルPro.単体はオンラインストアでも販売が行われます)
説明できるスタッフが限られているということもあるのでしょうが、記事執筆時点でリゲルPro.ストーブプラスが購入可能なストアは24店舗と非常に限定的です。単純に販売数を追うプロダクトであれば販路は限定しない方が数を稼げるため、そういった位置づけの製品でないと考えられます。
総重量は約140kg
「リゲルPro.ストーブプラス」に含まれる、リゲルPro. 、 TCフルフライシート、リゲルストーブ 、COチェッカーの総重量は約140kgになります。一般個人でこの重さの製品を運搬、設営、撤収するという利用シーンは想定しづらく、スノーピークに対するロイヤルティの高いユーザーであっても利用には相当な苦労が伴うでしょう。
ストーブ単体販売はなくセット販売のみ
リゲルPro.ストーブプラスに含まれる「リゲルストーブ」は、4面ガラスのステンレスストーブでストーブ単体でも商品力が高いように見えます。販売価格も数十万円になるでしょうが、それでも150万円のフルセットよりはずっと売りやすいはずです。
幕内での火器利用をサポートするという背景があるものの、単体販売をしないことからも、単純な売上改善よりもフルセットの導入が可能な顧客にのみ販売するということを優先しているように見えます。
真のターゲットは施設事業者か?
そうなると、真の販売ターゲットは個人ではなく、キャンプ場やグランピング施設などの施設事業者である可能性が見えてきます。
施設事業者から見ると150万円は回収可能な範囲
一般個人に対しては150万円のテントというのは法外な値段に見えますが、施設事業者の視点で見ると現実的な価格設定になります。コテージ等の箱物設備や、ドームテントなどの常設設備に比べると十分リーズナブルかつ、スノーピークブランドを訴求できるというメリットがあります。
一泊4〜5万円程度の価格設定でも毎週末埋められれば1年以内に回収が可能です。
メーカーが公式に幕内火器利用を保証する希少製品
ほとんどのテントメーカーは幕内での火器利用は禁止しています。事故リスクが大きく、あくまで幕内での薪ストーブ利用はユーザーの自己責任というスタンスを取っています。
今回、ストーブと専用設計のテントをセットで使うことと、一酸化炭素チェッカーを併売することでスノーピークは公式にリゲルPro.内での火器利用を保証しています。これにより「薪ストーブを安心して使えるスノーピークのテントで泊まれる」という訴求が可能で、施設事業者にとっても施設を利用する一般ユーザーにとっても魅力に映るでしょう。
冬場の利用をメインで訴求しつつもオールシーズン使える
リゲルPro.ストーブプラスは、冬場の利用をメインで訴求しつつも、リゲルPro.単体でシェルターとして利用すれば、オールシーズン使えるようになっています。
「冬の3〜4ヶ月しか利用できないテント」ではなく、「年間12ヶ月使えるテント」となるため、投資回収期間を考える施設事業者にとってはこれもプラスに働くでしょう。
それでも炎上マーケティングを実施した背景
施設事業者が真のターゲットという仮説が正しいとすると、炎上させてまで一般ユーザーにも告知したのはなぜなのでしょうか。
メールマガジン、各種SNSで大々的に告知
今回リゲルPro.ストーブプラスの製品発表はメールマガジン及びスノーピークの各SNSで大々的に発表されました。これまでの新商品は複数製品まとめて告知されることはあっても、このように1製品のみがフィーチャーされて告知されることは稀です。
一般ユーザーへの認知度を上げることで法人営業しやすくなる
リゲルPro.ストーブプラスの販売数や、スノーピークのブランド力向上を目的として今回の発表が行われたのだとすると、結果的にネガティブな反応ばかりになってしまったため、失敗という結果ということになってしまうでしょう。
しかしながら視点を変えて、「リゲルPro.ストーブプラスという高級テントがスノーピークにはあるという認知獲得」が今回の発表の目的だったとしたらどうでしょうか。ネガティブな反応とはいえども本製品の情報拡散は凄まじいものがあり、大成功だったと言えるのではないでしょうか。
スノーピークでは住箱というトレーラーハウスも施設事業者向けに販売していますが、残念ながら一般ユーザーにはほとんど認知されていません。「リゲルPro.ストーブプラスという高級テントが一般ユーザーの間で話題になっている」という事実が作れたことで、今後施設事業者向けに販売がしやすくなるというところまで練られた施策だったとすると、その効果は大きいと言えそうです。
「高すぎて買えない→高級テントに安く泊まれる」への受容変換
「スノーピークが最高級のテントを作りました。150万円です。買ってください。」というメッセージに対してネガティブな反応をした一般ユーザーのみなさんも「このテントに数万円で泊まれますよ」という話になったらどう感じるでしょうか。
- スノーピークが作った最高級テントにお試しで泊まれる
- 4面ガラスの本格的な薪ストーブで暖を取れる
- テント内で薪ストーブを利用する前提の製品なので安心
- 面倒な設営や撤収は不要
ということになれば、反転して「泊まってみたい」「所有はできないけど利用はしたい」とポジティブな印象を受ける方も一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
まとめ
今回は発表された限られた情報から、スノーピークの新商品の狙いを推察してみました。推察が全て的外れで、本気で150万円のテントを一般ユーザーに売って業績改善を図ろうとしている可能性もあります。いずれにせよ2024年の新商品は「圧倒的な商品力」があるということなので、今後の発表に期待が高まります。気になる方はぜひチェックしてみてください。
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