2022年初頭に、静岡県富士宮市に星空が見える富士山の麓のキャンプ場「GRAN REGALO ASAGIRI(グランレガロあさぎり)」が新たにオープンします。キャンプレビューでは、オープンまでの様子を特別連載という形で密着取材させていただくことになりました。連載第6弾は、少し趣向を変えて苦労話についてご紹介します。
Sponsored by 株式会社NO・A・SO・BI
「GRAN REGALO ASAGIRI(グランレガロあさぎり)」のTwitter公式アカウントでもオープンまでの様子を定期的に情報発信しています。ぜひフォローしてください。
グランレガロあさぎりは異業種からの参入
第1回目の連載でもお伝えした通り、グランレガロあさぎりをオープンする株式会社NO・A・SO・BIのみなさんは、元々IT業界出身の方々で、キャンプ業界出身でもキャンプ場を過去にオープンしたことがある方々でもありません。
私も今回の連載にあたり近くで取材させていただく中で、IT業界出身の方ならではの仕事の進め方のスピード感や柔軟な発想、チームワークの強固さなどがキャンプづくりに活かされているなと日々感じていますが、未経験ゆえにこれまでの常識が通じないことや、想定を大きく覆すような出来事がたくさんあったようです。
そこで今回の連載では、「こんなはずじゃなかった…」というような苦労話をご紹介させていただきます。キャンプ場をつくるのにどんな苦労があるのか、普段からキャンプをされている方はキャンプ場に訪れる際の参考としてお楽しみください。キャンプ場関係者の方はあるある話としてお楽しみいただければ幸いです。
こんなはずじゃなかった6つのエピーソド
こんなはずじゃなかった…というようなエピソードはどんなことがあったのか、改めて株式会社NO・A・SO・BIの取締役 山田 浩之さんにインタビューして伺いました。
ーーまずは山田さんのことについて教えてください。NO・A・SO・BIに参画された経緯や、NO・A・SO・BIでどんなことをされているか伺えますか。
前職は代表の荒瀬と同じIT系の会社で働いていました。体調を崩したりしたのもあって2年半ほど前に退職しました。幸い蓄えもいくらかあったのでしばらくは何もしないと決めてのんびりしていました。そんな中、1年くらい前に荒瀬さんも退職されたと聞いてちょっとびっくりしましたね。仕事も出来るし出世していくんだろうなと思っていたので。
その後、荒瀬さんから一緒に何かやらないかと声をかけてもらったんですけど、当時の何もしない生活をすっかり満喫していて普通の仕事は出来ないだろうなと思っていたので返事は渋っていたんです。そんな時に富士宮に良い土地があるからキャンプ施設でも作らないかって話をされました。BBQとかアウトドアは好きだったので楽しそうだなと思い、一緒にやってるみんなには申し訳ないんですけど楽しめたらいいなくらいの軽い気持ちで話にのっかりました。後でも出てきますが、いざ始めてみると予想以上にお金が必要になって遊びでは終われない感じになりましたけどね。
特にこれをやっているといったこともないのですけど、一緒にやっているみんなは仕事の出来る切れ者ばかりなので自分はついていくのがやっとです。自分は車の運転が好きなので、金は出すけどあまり口は出さないドライバーってところですかね。将来的には大人の秘密基地みたいなものを作ってみたいですね。
余談ですが、退職して困ったことは職業欄になんて書くか迷うことですね。無職とか自由業とか書いてましたけど選択肢が無いこともあったりして。今は会社役員って書けるようになりました(笑)
開業資金3,000万円を予定も、気づけば…
ーーグランレガロあさぎり開業準備において、お話しにくいと思いますが、「こんなはずじゃなかった…」といようなエピソードを教えてください。
まずはお金の話ですね。当初、キャンプ場を始めるにあたって、開業資金を3,000万円ほど用意していました。3,000万円でも大金です。3,000万円あれば、受付を行う管理棟、ウッドデッキサイト、オートキャンプサイト、トイレなどは十分作れると安易に考えてキャンプ場を始めることにしました。
もちろんキャンプ場なんて社内では誰も作ったことがある訳ではないので、多少はオーバーするかなっていうくらいの考えはありました。その甘い考えは、結構早い段階で打ちのめされます。完膚なきまでに…。
この後に順にお話ししますが、3,000万円なんてとんでもない、気づけばあれよあれよといううちに、倍どころか数倍に膨れ上がってきます。せっかく来てくれるお客さまに満足してもらうためには、膨れ上がるものを妥協して折り合いをつけることができず、ここからは清水の舞台から飛び降りる覚悟で突き進みました。
施設の事業用地が当初予定の倍以上に…
ーーキャンプ場づくりってそんなにお金がかかるのですね…。実際に開拓を始めてからはどんな困難がありましたか。
開拓については、まず初めにキャンプ場を始める土地を見に行きました。素晴らしい立地です。富士山もすごく綺麗。都心からのアクセスも良く、環境も最高♪自分でもこんなところに住んでみたい。こんな感想をもって土地は決まりました。
ただ、その土地に隣接したところにさらに大きい4,000坪の土地があります。誰かがここに工場ができたらどうします?って言いました。確かにここに工場とか建築系の資材置き場、倉庫なんてものができたら、キャンプ場としては終わりです…。工場の裏でキャンプをするくらいなら、わざわざここまで来ないな。という気持ちになり、ここでやるならそのリスクをなくしてからじゃないと始められない。
「こっちもまとめて大きくやるか?」という社長の荒瀬の一言で、キャンプ場の予定地を倍にすることにしました。
利用者の方にも都会の喧騒から離れた富士の麓で快適に過ごしてもらうために、より広い敷地でゆったりしたキャンプ場を作ろう!これが開業資金が膨れ上がっていくスタートでした。
えっ?キャンプ場に防火水槽っているの?
ーーまさに鶴の一声で用地が倍になったのですね(笑)。そんなに簡単に倍にしてしまって、何か不都合はなかったのですか。
ここから行政書士にも協力をいただきながら、事業用地としての申請の準備が始まっていきます。そこで事業用地を倍以上にしたために大きな影響がジワジワどころか大きく出てきます。
まずは、防火水槽。これだけ大きい土地でキャンプ場を始めると防火水槽も敷地をカバーできる場所に、広さに合わせたサイズが必要になってきます。今回の土地だと、40tの防火水槽。もちろん穴を掘って基礎作って、防火水槽埋めて…。掘り返した残土の処分も高いんですよね。でも、まぁ安全に楽しんでもらうためには、必要経費だ。そう言い聞かせてます。
調整池って何?
次は調整池です。我々は「調整池って何?」っていうレベルの無知なIT出身者です。知識のある人にとっては、そんなことも知らないの?って言われるかもしれないですが、まさかここまで大掛かりなものとは考えていませんでした。
敷地が広くなったため、必要な調整池のサイズは何と約47m×30m。もちろん深さなどでも変わりますけど、土地の形状などを考えるとこのサイズになりました。学校にあるプールよりも大きく、もちろん人が落ちないように柵やそれを隠すための植樹などあれよあれよといううちにお金が…。
えっ?下水ってないの?
ーーなるほど!そう言われてみると、確かに不自然な位置に池があるキャンプ場もありますね。あれは調整池だったとは知りませんでした。
まだまだ続きます。建設会社の友人を連れて現地に行きました。すると一言目に、「目の前の道まで下水通ってないね。」と言われてしまいました…。
周りには民家もあります。下水は通っていて当たり前という価値観が崩れました。あって当たり前、トイレの水はボタンを押せばどこかに行くものくらいの感覚でしかなかったです。はい、ここでもすごく大きな浄化水槽が必要になります。このころには、金策に走ってました(苦笑)ただ、ここまでは利用していただく方たちには直接関係ない法律関係やインフラの部分です。
ここからは、もう少し利用者の方に近い内容です。
より良いキャンプ場を目指して設備を充実化
ーー目には見えにくい基礎設備にこれだけの苦労があるとは、正直普通にキャンプしてるだけでは全く想像がつかない部分ですね。ぜひ、サービス面での苦労についても教えてください。
せっかく富士山が見えるキャンプ場に来てくれた方々に向けて少しでも良い環境を提供するために、色々と考えた結果、ここからまた色々と設備が充実してきます。それに伴って費用も大きく膨らんできます。
キャンプ場の占有サイトごとに調理台とシンク、電気があった方が快適だね。ウッドデッキサイト用に貸し出す大型テントの内装はこんな感じが良いよね。冷暖房も必要だね。雨が降った時にはこうだね、ペット可のサイトにはこんなものが…などなど夢を膨らませ、財布を凹ませ、すったもんだしながらやっと完成が見えてきました。
ーー赤裸々なエピソードをお話いただきありがとうございます。キャンプ場開設にあたりこのような失敗談はあまりオープンにならないので、とても参考になりました。
笑う人もいるかもしれませんが、素人が持つ浅はかな知識を叩きのめされ、利用者目線で考えたものを取り込んでいくと、当初見込んでいた開業資金の数倍かかる現実。それでも、ご利用いただくお客さまに笑顔になっていただくように、妥協できないところは妥協せずに良いキャンプ場を作っていくために、これからも頑張っていきますので、応援よろしくお願いいたします。
ちなみに、実はスエズ運河の座礁事故の影響も受けています…。これはまた、別の機会に。
不測の事態もすべて楽しみに変えていく
第1回の連載の中で株式会社NO・A・SO・BIの荒瀬さんが以下のようにコメントされているのが印象的でした。
いまは、施設開設に向けてショートカットできるものはないので、一つ一つ考え、周りにも協力してもらいながら、そして楽しみながら進めているので変わったのかもしれません。
主に無形であるITサービスとは異なり、キャンプ場は「場」づくりの有形サービスを提供する事業となるため、不測の事態というのは多岐に渡り発生します。しかしながらエピソードを伺いながら、NO・A・SO・BIのみなさんはそれらの困難自体を楽しみながら、「どうすれば宿泊者のみなさんに最高の体験を提供できるか」を試行錯誤されているように感じました。
マニュアルや想定通りにはいかない施設づくりですが、どういう経緯でキャンプ場がつくられたのか?を知っていただくとより楽しいキャンプ体験ができると思います。グランレガロあさぎりは2021年夏オープン予定です。ぜひご期待ください!
次回予告
次回の連載では、工事着工の様子についてご紹介します。
※次回の連載は2021年5月20日→6月3日を予定しています。