2021年10月1日の新製品発表会で、Workman(ワークマン)は2022年からテント等のキャンプグッズを大幅に拡充し、100品以上の商品を投入して本格的に市場参入することを発表しました。これにより2022年のキャンプ市場はどのように変化するでしょうか。詳細を深堀ります。
アイキャッチ画像出典: fashionsnap.com
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2021年のテスト販売を経て、2022年に本格参入
2020年秋頃、ワークマンは2021年の新商品として、チェアやアルミテーブルなどのキャンプグッズの販売を開始すると発表しました。その破壊的な価格設定から、当時かなり話題となり、数多くの店舗で即時完売して今でもほとんどの商品を店頭で見つけることができないくらい人気となっています。
しかしながら2021年に販売されたグッズは家具類や調理器具、ツール類など、小物系が多く、限定的な商品展開となっていましたが、2021年10月1日の新製品発表会で、テントやタープを含むキャンプグッズの拡充を行い、ラインナップを100点以上にして本格参入することが発表されました。
これらの経緯から鑑みるに、2021年の限定的な展開はテスト販売の位置づけで、相当な手応えを感じて本格展開するに至ったと見るのが自然かと思われます。
ワークマンは誰をターゲットにしているのか?
では、ワークマンは今後拡充していくキャンプグッズをどんな人に売りたいと思っているのでしょうか。(※ここからは私の推察であり、記載する内容の正確性は保証しません。本当のところはワークマンの中の人しか知りえません。)
メインターゲットはキャンプ潜在ユーザーではないか
日本オートキャンプ協会によると、日本のオートキャンプ人口は(2020年には新型コロナウイルスの影響で減少したものの、)2019年時点で860万人となっています。ざっくりこの860万人を初心者、中級者、上級者の3層に分類し、さらに統計には出てこない、「未だキャンプをしたことはないが、したいと思っているキャンプ潜在ユーザー」がかなりの数4層目にいると思われるため、以下の様に図示します。
これらの層のテント所有状況と買替経験は以下のようになるかと思います。
当然ながらキャンプ潜在ユーザーは、テントを持っておらず、購入経験もありません。もう少しユーザー像の解像度を上げると以下のようになります。(実際にみなさんの近くにもこういう人がいるのではないでしょうか)
テント3製品は何を解決するのか?
上記のようなユーザーをターゲットとしていると仮定すると、今回発表されたテント3製品の狙いが少し見えてきます。
BASICドームテント【4,900円(税込)】
BASICドームテントは、ソロ用の格安ドームテントですが、この製品が「キャンプ潜在ユーザー」向けの製品だと見ると利用シーンが見えてきます。
「キャンプをしたことがない人が、キャンプ慣れしている友人にキャンプに連れて行って欲しい」と頼んでソロでのグループキャンプ(いわゆるソログルキャンプ)をするためのテントと捉えられそうです。親しい友人であっても新型コロナウイルス感染のリスクを考えるとテントは分けた方がいいですし、5,000円弱で万が一キャンプに一回しか行かなかったとしても割り切れる価格帯ではあります。
ソロキャンプに何度も行かれる上級者の方からすると、「どうせ安かろう悪かろうのテントではないか?」と見えるかもしれませんが、そういった方はそもそもターゲット外なのかもしれません。
ワイドミシックドームテント【17,800円(税込)】
ワイドミシックドームテントは4人用のファミリー向けテントです。こちらも同じく「キャンプ潜在ユーザー」向けの製品という視点で見てみましょう。
キャンプをしてみたいと思っているファミリーが、キャンプ慣れしたファミリーと一緒に初めてキャンプに行く場合、いきなり道具一式を調達するよりも、テントなどがレンタルできるキャンプ場を選ぶことが多いかと思います。
4人用のファミリーテントのレンタル価格の相場は1泊7,000〜10,000円くらいなので、17,800円という価格設定は、2泊するのであればレンタルするより思い切って買ってしまった方がよいのではないか?と思わせるに十分な価格設定です。
ミシックツーリングテントエアロガード【9,800円(税込)】
ミシックツーリングテントエアロガードはバイクでキャンプに行く方向けのソロ用ツーリングテントです。
私はバイクに乗らないのであまりピンときていませんが、BASICドームテント同様、こちらもキャンプ潜在ユーザーがツーリングキャンプ慣れしている人と同行する際に買いやすいテントと見ることができるでしょう。普段はファミリーキャンプをしていて、バイクでソロキャンプに行きたいと思っているセカンド需要を狙っている可能性もあります。
キャンプ市場はどう変わるか?
2022年の2月以降にこれらの商品が販売されることが予告されていますが、ワークマンの本格市場参入によりキャンプ場はどう変化するでしょうか。こちらも考察してみます。
裾野が広がり市場全体が拡大する
以前からスノーピークはエントリーモデルの販売により、ユーザー数の拡大に注力していますし、コールマンも2022年の新商品としてソロキャンプ向けのグッズ一式をセットにした商品を出すことを予告しています。
しかしながら、特にスノーピークは価格帯としてはハイエンドなので、一式揃えると10万円コースになってしまいます。ワークマンの本格参入により、ソロキャンプ用のグッズ一式が3万円くらいで買えるという世界観が実現されると、一気にキャンプ人口が拡大することが期待されます。
新型コロナウイルスの感染拡大状況にもよりますが、シーズンが始まる2022年4〜5月頃に特に傾向が顕著に見れるでしょう。
競合メーカーは侵食されてしまうのか?
ワークマンの市場参入前にロープライスの価格帯で勝負しているメーカー(具体的にはキャプテンスタッグやロゴスのROSYブランド等)は影響を受けるかもしれませんが、その影響は短期的かつ限定的だと思われます。
そもそも今回のワークマンの新商品は製品の安定供給のため、オンラインでの事前注文、実店舗での受け取りが前提となっており、オンライン注文できるリテラシーがある方でないと購入ができません。買い手のリテラシーを問わず、オフライン販路網を広域に構築しているキャプテンスタッグやロゴスとは販売面が大きく異なります。
また、今回100を超える商品が投入されることもアナウンスされていますが、キャプテンスタッグやロゴスの商品数は数百あるため、ワークマンだけで一式揃えたとしても、すべてのニーズは満たしきれず、結局は他メーカーの商品も購入することになるでしょう。
まとめ
色々と書きましたが、ワークマンの本格市場参入はマクロな視点で見た場合、最終的にはプラスになると思われます。今回の発表でキャンプにそれほど興味がない方もワークマンの動向には注目しましたし、期待の大きさも垣間見えました。
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