オンウェー株式会社はアウトドアファーニチャーを中心に開発、提供する1995年創業のメーカーです。キャンプでもOnway(オンウェー)ブランドのチェアを既に使っている方も多いかと思いますが、今回、代表取締役社長の泉里志さんにチェア開発に対するこだわりについて伺いました。
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オンウェーとは?
まずは今回インタビューさせていただいたオンウェーについてご紹介します。
アウトドアファーニチャーを中心に販売するメーカー
オンウェーは、1995年創業のアウトドアファーニチャーを中心に販売するメーカーです。後述しますが、元々は国際会議の企画やイベント企画、展示会企画を主に事業を展開していた会社ですが、その間に日本のアウトドアブランド会社からの依頼を受けて、海外アウトドアファニチャー工場の検品を請け負う商社として事業を行っていたものの、そのノウハウを活かし、自社開発も行うようになったメーカーです。
通なキャンパーに支持される座り心地の良いチェア
大手アウトドアブランドと比べると認知度は相対的に低いですが、特にアウトドアチェアの座り心地には定評があり、通なキャンパーの間では使っている方が多いブランドです。キャンプ場でもオンウェー製のチェアを見かけたことがある方も多いでしょう。
オンウェー泉社長へインタビュー
オンウェー株式会社 代表取締役社長 泉里志さまにインタビューを行いました。その詳細をお届けします。
第一次アウトドアブームの時期に創業
ーーまずはオンウェーの創業経緯について教えてください。たまたま国外で製造された製品の検品などをきっかけにスターしたアウトドアファニチャビジネスですが、自社製品の開発にどのようにして事業の軸を切り替えていったのですか。
泉さま: 1990年代の第一次アウトドアブームの際、今でこそ3,000〜4,000円で販売されているディレクターズチェアは当時13,000円でも売れていました。ブーム中はホームセンターで販売する国内ブランドのチェアでも一回の注文で60万脚というような規模で発注がありました。この規模になると工場はパンクし、製品加工に手抜きが発生し、製品品質が下がってしまうということがありました。
第二次アウトドアブームと言われている昨今でもオートキャンプ人口はコロナ前で840万人ですが、第一次ブームの際は1,500万人だったので、ものすごい規模でした。当社は国内のブランド業者から検品業務を請け負う商社としてアウトドアファニチャーのビジネスを始めましたが、その後、自分たちでも製品開発してみようと思い、自社開発に舵を切りました。
世界で100万脚売れたディレクターズチェア
ーー自社開発製品を世の中に出していく中で、手応えを感じた製品、ヒットした製品としてはどんなものがありますか。
泉さま: ヒット商品はたくさんありますが、自社開発に切り替えたばかりの頃はイタリア製やフランス製のチェアを参考に改良チェアを作っていました。その後オンウェーオリジナルのディレクターズチェアを開発し、それまで市場にあったディレクターズチェアの構造を大きく変えました。このチェアは世界で累計100万脚売れました。
ーーこれだけ洗練されたデザインや革新的な構造の製品を世に出していくと、見た目だけ似せた模倣品を作るメーカーさんにターゲットにされたりしませんか。
泉さま: 残念ながらこれまでも特許侵害に関する係争も起きています。こういった事態を防げるよう、オンウェーではたくさんのパテントを取得しています。(筆者注: 実際に特許情報プラットフォーム上で検索するとオンウェー株式会社では70を超える特許、実用新案、意匠、商標を取得していました。)
ーー私も貴社製品のコンフォートチェアを愛用させていただいております。20〜30脚アウトドアチェアを売り場で展示している販売店で、すべてのチェアに座ってみて一番座り心地がよかったのがコンフォートローチェアでした。
泉さま: コンフォートローチェアは体の大きい方でも楽に座れるために開発した椅子です。サイズの大きい椅子といえば、オンウェーのコンフォートチェア2という名作があります。元々スリムチェアが元になっている製品です。ドイツの展示会でスリムチェアを展示していたところ、背の高いオランダ人の方がスリムチェアではサイズが足りなかったため、コンフォートチェア2を作りました。展示会をきっかけにヨーロッパ10カ国で一気に販路が拡大しました。
いま人気の「コンフォートローチェア」、「コンフォートローチェアプラス」は、大サイズの「コンフォートチェア2」を参考に開発したものです。
大手ブランドのチェアも手掛ける
ーーこれだけの販売実績や、開発現場を熟知したノウハウをお持ちだと、業界内でも相談が来たりするのではないですか。
泉さま: 現在でも大手アウトドアブランドから開発依頼があります。製品開発担当の方が理想的なデザインを突き詰めた後、その次に量産化する際に開発現場のことを熟知していないと実際の開発は進められないので、当社に相談が来るのです。
当社の委託工場は中国にありますが、コロナ禍で現地に行けなくとも、スマートフォンを使ってリアルタイムで様子を確認できるようになっています。
ーーオンウェーの今後のビジョンや中長期目標についても教えてください。
泉さま: これまで当社はアルミ・折りたたみ・チェアという分野で製品開発を行ってきました。折りたたみチェアというマーケットは非常に狭い世界です。ただし深く突き詰めると、まだまだ色々な可能性があるので、今後もこの分野で100年続く最高品質の製品を極めていきたいと思っています。
製品開発だけでなく、社会貢献、次世代の才能育成を目的として、北京でデザイン工学を専攻する学生向けに講義を行っています。学生は直接的にはチェアを作るために講義を受けている訳ではなく、デザイン工学のために受講をしている訳ですが、実際に製品開発に携われるという点が好評です。
ーーお話いただける範囲で構いませんので、今後登場する予定の新商品についても教えていただけないでしょうか。
泉さま: これからもユーザーの皆さんに喜んでいただける新商品を出していく予定です。今年過去になかったタープを発売しはじめています。そして直近ではIGTテーブルを販売する予定です。
折りたたみチェアの開発は矛盾との戦い
ーーこれまで会社を経営されてきて、いわゆるハードシングス(困難だった局面)はエピソードとして何かございますか。
泉さま: 折りたたみチェア開発そのものが矛盾との戦いなんです。「持ち運び時は小さく、利用時は大きくゆったり使えるようにする必要がある」、「デザインもチェアを置いた空間を彩る芸術性を追求しながら、構造的には折り畳めるようにする必要がある」、「チェアそのものは軽量にしながら、耐荷重を高めないといけない」というような多数の矛盾に対しいつも苦戦しています。
折りたためない普通のチェアの方がよっぽど作りやすいとすら思いますよ(笑)。100点満点のアウトドアチェアというのは存在しなく、何かしら矛盾を抱えているのです。
実際に座るとわかるオンウェーの品質
ーー最初にキャンプ道具一式を揃える際、アウトドアチェアというのはテントなどと比べると優先度が下がってしまい、座り心地よりも値段で選んでしまって後悔するという方も多いかと思います。そんな方向けの「良いアウトドアチェア」の選び方を教えていただけませんか。
泉さま: 一般的にはブランドや値段だけで選んでしまうという方が多いかと思います。オンウェーのチェアがここまで支持いただけるようになったのは、座り心地に究極にこだわり、部品の角度一つに対してもとことんこだわって製品づくりをしてきたからだと思っています。そういった製品へのこだわりは実際にチェアに座っていただくとわかっていただけると思います。
ちなみに、アウトドアショップなどで試し座りされる際は、午前中に試されることをおすすめします。展示会でもそうなのですが、疲れている夕方に座るとどんなチェアでもなんとなく良く感じてしまうんです(笑)。
まとめ
今回のインタビューを通し、「アウトドアチェアはブランドや価格で選んでしまいがち」というのは本当にそうだなと感じました。キャンプでは寝ている時間と座っている時間が一番長いので、座り心地を重視してチェアを選ぶべきでしょう。気になる方はぜひチェックしてみてください。
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