日産が同社のキックスe-POWERのタイアップ広告動画をcarview!上に出稿し、キャンプ系インフルエンサーのマイキャンさん監修の元キャンプを楽しむ動画が公開されました。ところが動画内で落ち葉の上で焚き火を行う危険なシーンがあり、炎上しました。キャンプの安全管理について再考します。
アイキャッチ画像出典: carview!
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炎上の経緯
1. 2021年1月28日: carview!ページ上で記事広告掲載開始
carview!上で日産新型キックスの記事広告が掲載開始されました。キャンプにおいて自動車があると行動範囲が広がりますし、グッズもたくさん積み込めるので、キャンパーをターゲットとしたこういった広告の企画は自然な流れだと思われます。車が売れなくなってきている昨今、アウトドアシーンを具体的に連想させ、購買意欲を掻き立てる行為自体は批判されるものではないと思います。
今回の問題の根底は、広告企画主旨そのものではなく、このアイキャッチの画像にもある焚き火シーンでした。
2. 2021年1月31日: マイキャンさん他出演のタイアップ動画公開
Web上の記事だけではそこまで炎上しておらず、大きく反響があったのはこの後の動画公開後でした。
3. 2021年2月9日: 落ち葉の上での焚き火危険行為がTwitterで指摘され炎上
風向きが大きく変わったのは2月9日からです。動画の再生数も伸び始め、Twitter上で落ち葉の上での焚き火シーンの危険性が指摘され始めました。
当該動画は既に削除されていますが、焚き火台そのものが斜めに傾いているようにも見えますし、地面には乾燥した落ち葉が敷き詰められていて、焚き火が爆ぜると火の粉が飛んで非常に危険そうなシーンであることは確かです。
実際に焚き火が爆ぜて火の粉が飛んでいるシーンもありました。
4. 同日14:24 : マイキャンさんがTwitterで謝罪コメント掲載
この炎上を受け、マイキャンさん自身がTwitter上で謝罪コメントを掲載しました。
この時点では、
- 撮影は安全に配慮して撮影していた(具体的な内容は示されず)
- 一部配慮が至らないシーンがあった(どのシーンかは明記なし)
の2点のみが語られ、具体的に何に謝罪しているのかわかりにくい文面になっていました。
5. 同日16:44 : carview!がTwitterで謝罪コメント掲載
2時間強後にcarview!からもTwitterで謝罪コメントが掲載されます。マイキャンさんと同じく一部配慮に欠けたシーンがあったことを謝罪しています。
6. 2021年2月10日: マイキャンさんが謝罪文掲載
翌夜、マイキャンさんが改めて謝罪文を掲載しました。
掲載内容を要約すると、以下のようなことが書かれています。
- マイキャンさん自身は落ち葉上での焚き火の危険性は認識していた
- キャンプ場であったことと、スタッフがたくさんいたことに甘んじて撮影隊に注意喚起できなかった
- 今後の活動は一時休止し、キャンプについて一から勉強しなおす
7. 2021年2月10日: carview!お知らせ欄に謝罪文掲載
carview!のお知らせ欄に謝罪文が掲載されました。
文面の要約は以下です。
- 撮影はキャンプ場の敷地内で行われた(キャンプ場ではなく森林で撮影したのでは?という疑惑に対しての否定)
- 火気に対する安全配慮が欠けていた
- 視聴者、関係者等に迷惑、不快感を抱かせたことに対して謝罪
8. 2021年2月11日: 日産キックスページ上に謝罪文掲載
日産のキックスの商品ページにも謝罪文が掲載されました。
この度の、株式会社カービュー合同WEBタイアップ企画「新型キックスとキャンプ女子のマイキャンさんと、初めての“冬キャン”にチャレンジしてみた」について、適切ではない発信をしてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます。
今回の企画にあたっては、キャンプ場の利用ルールやマナーは事前に確認していたものの、撮影当日の現場の状況や落ち葉の危険性、テントや車両との距離など、焚火を安全に行うための知識や、総合的な安全を担保するといった基本的なことが、現場スタッフや各担当者に不足しておりました。皆さまにキャンプを安全に楽しく行っていただくための情報発信をすべき立場にもかかわらず、危険につながるような撮影、またそれに気づかず発信してしまったことに関し、関係者一同深く反省し、今後の対策並びに再発防止を徹底してまいります。
引用元: 日産キックスe-POWER商品ページ
こちらも文面を要約すると、以下です。
- 不適切な発信について謝罪
- キャンプ場の利用ルールやマナーは事前に確認していた
- 現場スタッフや各担当者に安全担保の意識が不足していた
- 今後の再発防止を徹底する
広報文面のお手本のような隙のない文章です。
- 何について謝罪しているか明白
- 主語を明記している
- やったこと、やっていなかったことを分けて書いている
- 起こしてしまったことに謝罪と反省の意を示し、今後の対策についても意思表示している
マイキャンさん、carview!に比べ掲載が遅くなったのは文面の作成とチェックや再鑑に時間がかかったためと思われます。
監修責任は誰にあるのか?
今回の事象ですが、マイキャンさん即日正式謝罪文掲載、活動休止報告があり、数日遅れてcarview!、日産から公式文面での謝罪掲載という対応となりました。
監修責任の所在
記事広告内の表記を見る限り、今回の冬キャンプ体験企画はマイキャンさんの指導のもと行われたもののようです。
「知らなかった」≠「知っていたけど言えなかった」
今回の撮影を指導していた「マイキャンさんが落ち葉上での焚き火の危険性を認識していなかった」ということであれば、マイキャンさんが知識不足を謝罪して幕引きということは自然な対応だと思います。日産やcarview!、間に入っていた広告代理店はインフルエンサーとしての彼女の力量を過信してしまった罪はあるものの、両社の関係者がまったくキャンプの知識がなく、マイキャンさんのみが有識者で、「この焚き火の方法で問題ない」と監修していたのであれば、彼らはどうしようもなかったでしょう。
ただ、「マイキャンさん自身が落ち葉上での焚き火の危険性を認識していながらも、謝罪文にあるように撮影隊に注意喚起できなかった」ということなのであれば話は変わってくるでしょう。キャンプ慣れしている彼女が危ないと思っていながらも、撮影隊に言いにくいプレッシャーや雰囲気が現場にあったり、落ち葉を撤去する時間を与えないような行動があったのだとすると、当事者からも説明や謝罪があるべきです。
結局3者の文面からは、誰が総責任者なのかはわからずじまい
日産の文面を読む限り、「焚火を安全に行うための知識や、総合的な安全を担保するといった基本的なことが、現場スタッフや各担当者に不足していた」ことで今回の事案が起きてしまったということですが、この現場スタッフや各担当者がどの会社の誰なのか、誰が総責任者なのかは不明なままです。
犯人探しや粗探しをしたい訳ではなく、(関わっていた人すべてが気づくべきだったということはあるでしょうが、)3者で責任の所在がよくわからない謝罪文を掲載し、動画や記事が削除されてしまうと、このまま誰が総責任者で何が問題の真因だったのかわからないままこの事案が風化され、同じようなことが起きてしまうことを危惧しています。
改めて考えたいキャンプの安全管理
キャンプで何度か焚き火をやられたことがある方であれば、落ち葉の上での焚き火の危険性はイメージできることかと思いますが、今回、
- キャンプをやらない一般の人には焚き火の危険性、安全管理の重要性はそれほど認知されていない
- キャンプ慣れしている人(ましてやキャンプ業界でインフルエンサーとして影響力のある活動をしている人はより一層)は、キャンプにおける危険性や安全管理の重要性をまわりに説いて啓蒙することが必要
これら2点がより鮮明に浮き彫りになりなった事案と言えるでしょう。
焚き火をする際は落ち葉を片付けて、焚き火シートを敷いて
落ち葉のないところで焚き火をするのが一番ですが、どうしても落ち葉の上でする必要がある場合は、落ち葉をできるだけ排除し、焚き火シートやレンガ、ブロックなどの不燃物を敷いて焚き火を楽しみましょう。
正しい安全管理の知識を習得するために
私も先日取得しましたが、日本オートキャンプ協会の公認オートキャンプ指導者資格講座を受講し、資格取得すると、正しい安全管理の知識を習得できます。
講座の中でも1枠安全管理についてのみ講義を受けるコマがあり、体系的に安全管理について学ぶことができます。正しい知識を身に着けたい一般キャンパーの方、キャンプ系インフルエンサーとして活動されている方などには特におすすめです。キャンプ系の広告業務に関わられている方は、アサインするインフルエンサーや監修者を選ぶ基準としてこういった資格所有の有無を確認するのも一つの手かと思います。
まとめ
撮影現場で何があったのか、当事者しか知り得ないですし、お金をもらって出演している以上、言えることと言えないことはどうしても出てきてしまうと思います。マイキャンさんには活動自粛ではなく、活動を続けていただき、制約のないご自身のYouTubeチャンネルで正しい焚き火のやり方についてぜひ発信いただきたいです。
たかが焚き火ですが、火に関しては正しく安全管理をしないと大事故につながります。キャンプ業界全体がキャンプに関して情報発信する上で、楽しさだけでなく、こういった安全管理、マナーやルールについても相互に発信、啓蒙できるようなコミュニティによりなっていくとよいなと思います。
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